宮崎新一による全日本マウンテンサイクリングin乗鞍レポート レース情報
日本のヒルクライマーの祭典とも言える『全日本マウンテンサイクリングin乗鞍』。
悲願の初優勝を目指して、チャンピオンクラスに挑んだ宮崎新一(チームコムレイドジャイアント)によるレースレポートをお届けします。
大会名 : 2007全日本マウンテンサイクリングin乗鞍
天気 気温 : 28度
出場者数 : 約4000人 チャンピオンクラス272人
バイク : TCR ADVANCED ISP
レース結果 : 優勝
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とうとうやってきました、全日本マウンテンサイクリング乗鞍。
もちろん勝つ為に万全の準備を重ねてきたが、僕の心は暗かった。
というのは…
パワーメーターというものを付けて練習している。
自分の力が正直に数字に出る残酷な機械だ。
7月に幾らでも出たパワーが8月になると、どんどん下がってきた。
それを見なくても自分の体調は自分が一番よく分かる。
明らかに疲れやすい。
8月初旬に行われたレースではなんとか勝てたが、逆に一気に気が抜けてしまった。
その後、ボーっと練習していたせいで落車し、肩を脱臼。
なるべくして、なったと思う。
こうしてなんとか出場にはこぎつけたが…。
今日はもう開き直っていた。
負けて元々。
肩の力が抜けて、直前まで子供と遊んでリラックスして、スタートラインに立った。
乗鞍は桁違いに人数が多い。
チャンピオンクラス300名近くが一斉にスタートした。
しかし人数はガンガンと絞られる。
僕はやはり辛い。
ギリギリところで小集団の尻にしがみついた。
しかも5kmすぎた辺りくらいだろうか?チェーンを暴れさせてしまい、落としてしまった。
今日もTCR ADVANCEDのバイクのフロントはシングルのみ。
ディレーラーが無いので、ラインが不安定になると落ちやすい。
このせいで何度も自爆をしているが、やめられない。
特に今日は、極限まで絞った身体を作った。
フレームもSRAMも超軽量だ。
しかし更にそれ以上をバイクに要求した。
バーテープやブラケットカバーまで外した。
いつもならパニックになるのが、この大事なレースで何故か落ち着いていた。
集団はあっという間に見えなくなったが、落ち着いてバイクを直し、淡々と追った。
ペースが落ち着いていたのか?5分もかからず追いつくことが出来た。
この時点で人数は常連の強豪者約9名。
そして第一給水ポイントを過ぎると6名まで絞られた。
僕は相変わらず最後尾付近でヒラヒラしている。
嫌な流れを変えようと、一本だけ持ってきたカーボショッツを流し込んだ。
1時間のレースではボトルも持たないし、絶対補給食なども持たない。
レース前にあらかじめとって終わり。
でも今日は大好物のバナナを一本だけ持ってきた。
お守りのようなもので、飲まなくても良いからポケットに入れておきたかった。
今年ずっと練習の苦楽をともにした大事なパートナーだったからだ。
これが効いた。
第二給水ポイントを過ぎると本当の勝負が始まる。集団が不安定になり始める。
自分が辛いのは変わらないのだが、自然と前に出られるようになった。
残り5kmの看板を過ぎる。
藤田選手が様子見のペースアップをはかる、自分が次に続く…。
…続いたと思って、気がついたらもう飛び出していた。
考えは何も無かった。
残り4km少し。
明らかに早すぎる。
まともに考えていたらこんな所からは行けない。
あとは思い切りギアをかけて進んだ。
もう後戻りは出来ない。
苦楽を共にしてきたTCR ADVANCEDは羽が生えたように走る。
グングン伸びていってくれた。
しかし残り2kmを切ったところから大タレした。
この高度で強度を上げるともうどうにもならない。
ここで初めて後ろ、というより下を見た。
眼下右下には乗鞍の壮大な景色。
その中の追走3名はもう遥か後方だった。
30秒じゃきかない、その倍、1分はあるだろうか。
ここから追いつかれることはもうあり得ない。
でもどうしようもなく不安で全力でペダルを踏んだ。
子供の頃よく見ていた、お化けの夢。
あのお化けから逃げたい怖さを思い出していた…。
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※超軽量仕様のTCR Advanced+SRAM Forceと共に、初優勝にむけて独走する宮崎
Photo:Hiroyuki Kaijyo
残り1kmで更にタレた。
周りの観客?役員?の方はみんなもうゴールを確信している。
口々に「おめでとう!」と言ってくれているが、とても信じられなく、不安で最後まで全力で踏む。
そしてゴールへ。
最後の瞬間は思っていたよりあっけなかった。
一番初めに頭に浮かんだのはずっと支えてくれた妻だった。
薬指の指輪にキスをして、ラインをまたいだ。
2位だった2年前と何が変わっただろうか?
僕自身は何も変わっていなかったと思う。
でもそれから沢山の出会いがあって、沢山の支えが出来た。
それが新しい自分の力になったと思う。
全てに感謝!ありがとうございました!